点描の色覚検査表の原理 — 混同色線と輝度ノイズ
なぜある人には数字が見えて、ある人には見えないのでしょうか。仮性同色表の原理と、色覚ラボが検査表を計算する方法を説明します。
点描の検査表は仮性同色表(pseudoisochromatic plates)と呼ばれます。正常色覚でははっきり違う色なのに、特定の色覚異常では同じ色に見える2色を選び、数字と背景を塗り分けた検査表です。1917年に日本の石原忍が発表した検査表が最もよく知られています。
錐体は3つ、信号は2つ
私たちの目は、L・M・Sの3種類の錐体の反応を比べて色を作り出しています。おおまかに言えば「LとMの差」が赤-緑の方向を、「Sと(L+M)の差」が青-黄の方向を伝えます。LやMが欠けたり、2つが似通ったりすると赤-緑の信号が弱まり、Sが欠けると青-黄の信号が弱まります。
混同色線
すべての色を色度図(明るさを除いた色の地図)の上に置くと、1型2色覚の人に同じに見える色は、1点から放射状にのびる直線の上に集まります。この線が混同色線、線が集まる点が混同色中心です。2型と3型にも、それぞれの混同色中心があります。
同じ混同色線上の2色は、そのタイプの2色覚の人にとって、明るささえそろえばまったく同じ色です。
色覚ラボは、CIE 1976 u'v' 色度図で Cambridge Colour Test と同じ混同色中心を使います — 1型 (0.678, 0.501)、2型 (−1.217, 0.782)、3型 (0.257, 0.0)。表ごとに中心色を決め、その混同色中心の方向に沿って、数字の色と背景の色を反対側へ広げます。
輝度ノイズ — 明るさで読ませない
混同色線上の2色でも、明るさが違えば数字が見えてしまいます。そこで点ごとに明るさを6段階からランダムに選んで混ぜます。これは Regan・Reffin・Mollon(1994)が Cambridge Colour Test で用いた輝度ノイズです。数字を読むには、明るさではなく色の差を見なければなりません。
色の差を段階的に小さくする
正常色覚と色弱の違いは、「見えるか見えないか」よりも「どれだけ小さな差まで見えるか」にあります。色覚ラボは、数字と背景の u'v' 距離を赤・緑の軸で 0.100 → 0.019、青黄の軸で 0.110 → 0.036 と小さくしながら出題します(16表モードでは赤・緑が各5枚、青黄が4枚)。
Machado(2009)モデルで計算すると、赤の軸で最も易しい表の数字と背景の色差(CIELAB の彩度差)は、正常色覚では約54なのに対し、1型2色覚モデルでは約1と事実上消え、2型2色覚モデルでは約15が残ります。軸ごとに崩れるタイプが異なるため、どの軸を多く間違えたかでタイプの傾向を見ることができます。
| 軸 | 崩れるタイプ | 色差の段階(u'v') |
|---|---|---|
| 赤の軸 | 1型(1型2色覚・1型3色覚) | 0.100 → 0.019 |
| 緑の軸 | 2型(2型2色覚・2型3色覚) | 0.100 → 0.019 |
| 青黄の軸 | 3型(3型2色覚・3型3色覚) | 0.110 → 0.036 |
| 対照表 | なし(誰でも読める) | 明るさの差で表示 |
結果を読むルール
- 各軸1枚までの誤答は正常範囲とみなします。最も難しい表は、正常色覚でも画面によっては境界に近いためです。
- 2枚以上間違えた場合は、誤答の割合で軽度(半分以下)・中等度・強度(85%以上)の異常に分けます。
- 赤の軸と緑の軸の誤答率の差が30ポイント以上あればそちらのタイプの傾向として表示し、そうでなければ「区別しにくい」とします。実際の検査でも、点描検査表だけで1型と2型を見分ける精度は高くありません。
- 対照表を間違えた場合は結果の信頼度を下げ、易しい表を間違えて難しい表を正解するケースがくり返された場合は別に知らせます。
限界
実際の検査表は照明や印刷が標準化されていますが、画面は端末ごとに色が異なります。色覚ラボの色は標準的な sRGB モニターを前提に計算しているため、色域の広い画面や色の調整がされていない画面では、表の色が混同色線から少しずれることがあります。結果は参考のための推定としてだけ使い、心配なら眼科で検査を受けてください。オンライン検査の限界